ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

ディスクレビュー:スピッツ「醒めない」


スピッツが3年振りにアルバムを出した 3年振りである 前アルバム『小さな生き物』を手にとったあの時からもう3年もの月日が経過したのだ
あの時高2だった俺は大学生になった 人や環境など自分を取り巻く多くのものが変わった でもなぜか「彼女がいないという現実」は変わっていない もう…ダメかもしれんね(・ω・)

…そんなことは置いといて 今回のアルバム 期待通りどころではなく期待をはるかに通り越す勢いで良いアルバムだ 今までと変わらない表情を見せながらも確実に進化しているスピッツの姿がそこにあった

今作のタイトルチューン「醒めない」 スピッツが自らをみつめ 改めてロックバンドとしての決意を新たにするような楽曲だ こういう曲は今まであまり無かった気がする これまでスピッツの曲の主人公は「草野マサムネが描く世界の登場人物」であることが多かった でも「醒めない」においては曲の主人公はスピッツ自身である この曲を聴いてなんとなくthe pillowsの曲「About A Rock'n'Roll Band」を思い出した この曲もまたロックンロールとの出会いや初期衝動 そして決意をテーマにした曲である スピッツもpillowsも右翼曲折ありながら20年以上続けているバンド 長い年月をロックンロールに捧げてきた今だからこそこういう曲が作れるんだろうと感じる

そして今作のアルバム 個人的にはとてもとんがっているなという印象を持った でもその尖りは初期の作品にあった「内なる狂気」というよりもロックンロールの基本精神ともいえる「反骨心」から生まれたもののように思える

みんなが大好きなもの 好きになれなかった
可哀想かい? 「グリーン」

狂った今を生きていこう ハチの針だけ隠し持って イキがれ 「ハチの針」

ここ最近のスピッツには見られなかった(というか表に出さなかった)かなり挑発的な歌詞 その背景にはやはり「おじさんだってロックなんだぞ」的な若手バンドへの対抗心があるのだろうか インタビューでも結構若いバンドの名前を出してたしな 少しヒリヒリするような反骨心剥き出しの歌詞が作品に良いアクセントを加え 結果としてこのアルバムを「どこか引っかかる」作品たらしめているのは間違いないと思う

個人的なお気に入りは3曲目の「子グマ!子グマ!」ヘンテコなタイトルと曲のかっこよさ/切なさのギャップに完全にやられた 特に気に入っているのが2番のサビの出だし

幸せになってな ただ幸せになってな

ここ多分『幸せになって「ね」』じゃダメなんだよだって命令になっちゃうから! 「幸せになってな」という言い回しだからこそ 祈ることしかできない無力さ そして別れた悲しみを隠しながらも「君」の幸せを願う必死さが浮き彫りになる気がする ここもう聴くたびに切なさがグアー!っとくる割とマジで俺を殺しにかかってくるリアルなキラーフレーズだ
後は「グリーン」の爽やかさも好きだし「ハチの針」のヒリヒリとしたギターも良い んで「ヒビスクス」の圧倒的な名曲感 特に「しーろーいはーなーが」の部分でピアノにバンドサウンドが被さるようにしてサビに行く流れは最高ですね これまで以上にアルバム曲に気合が入ってると思った

ごちゃごちゃと書いたが 今作はかなり自分にはアタリの作品だった きっとこれからも聴き続けていく作品になると思う あと今作は今までスピッツにあまり触れたことのない人や「チェリー」くらいしか知らない人にこそ聴いてほしい! スピッツの ロックに対する「時代に流されず かといって時代遅れにもならない」絶妙な立ち位置を感じ取ることができると思うから