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ディスクレビュー:銀杏BOYZトリビュート「きれいなひとりぼっちたち」


「やべえのが来たな」

銀杏BOYZトリビュートの発売が発表された時、彼らを青春時代から追いかけて来たファンのほとんどはそんな感想を抱いたのではないだろうか。銀杏BOYZの曲が、彼らを敬愛する多くのミュージシャンによってカバーされる…多くのファンがこの事実に胸を膨らませたに違いない。銀杏BOYZの世代ではない自分でさえワクワクしたのだから。

銀杏BOYZトリビュート、「きれいなひとりぼっちたち」。YUKIが歌う『漂流教室が始まった瞬間、目の前には無邪気な笑顔をした少年の姿が確かにあった。YUKIの歌声はその天真爛漫さの中に純粋さ故の脆さをはらませながら、誰もが過ごしていたはずの「あの頃」を思い出させて行く。この曲を皮切りに、様々なミュージシャンによって時に激情的、時に叙情的に銀杏BOYZへの愛が紡がれていく

このアルバムを名作たらしめているのは、間違いなく銀杏BOYZ自身の曲の良さだ。当たり前だろと思うかもしれないが、彼らの曲は元々狂ったようなギターの歪みやノイズによって非常にカオティックだ。今回カバーしたミュージシャンは、原曲の雰囲気を大切にしつつ自分たちの個性も存分に発揮することで、改めて銀杏BOYZの曲はめっちゃ良い」という事実を聞き手に突きつけたように思う。

クリープハイプは相変わらずの甲高い声で「君」への一途な愛を歌い、サンボマスターは曲の持つ強烈なメッセージを暑苦しく叫ぶ。ミツメは原曲の持つ切なさを強調した大胆なアレンジを施した。どのミュージシャンも自由にやっているが、原曲よりもどこかキチッとしているのは彼らが曲中に登場する「純粋で愚かな若者たち」を俯瞰的に見る年齢に達しているからかもしれない。でも大人になって気付くこと、見えることもあるのだ、きっと。

銀杏BOYZをずっと応援している人も、銀杏を知らない人も楽しめる理想的なトリビュートアルバムになっていると思う。郷愁と新鮮さが全編を通して押し寄せてくる、そんな作品。もうホントいいんで、聴いてください。