ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

ディスクレビュー:SEAPOOL『Kiss the Element』

f:id:ks0623106:20200308115143j:plain

SEAPOOLの新作『Kiss the Element』を聴いた時、「青い炎」が頭に浮かんだ。静かな美しさを称えながら、激しい熱を帯びている、そんな作品だと感じた。

 

大阪を中心に活動し、じわじわと注目を浴びつつある若き才能、SEAPOOL。90年代オルタナの激しくも退廃的な空気を受け継いだ爆音サウンドと、どこかあどけなさを残したVo.小原涼香の繊細な歌声。激しさと繊細さがせめぎ合うことで生まれる感情の荒波が、今作でもしっかり表現されている。

 

不安定に揺れる「僕」の心と「あなた」への思いを、轟音の中で淡々と歌う「Schizo Flare」でアルバムは幕を開ける。曲名は小原によると「ひとつのものがばらばらになってそれぞれで燃えている」様子を表した造語とのこと。塊ではなく「かけら」のままで良いと優しく受け入れてくれるようなこの言葉は、「Kiss the Element」というアルバム名とも通じているように思う。

 

そこからは一瞬だ。気だるげな空気から突如放たれるシャウトがクセになる「シャーロット」。リードトラック「素描」では軋むようなカッティングから突如ぶちこまれる、低音マシマシのヘビーなイントロに一気に心を持って行かれる。「PEAT MOSS」では静と動を何度も繰り返す演奏が緊張感を放ち、ラスト「condle」の長いアウトロで深い余韻を残したままアルバムは幕を閉じる。息もつかせぬ5曲24分、1曲1曲がそれぞれの燃え方で、聴き手の心をじんわりと熱くしていく。


SEAPOOL - 素描

青い炎は赤いそれよりも温度が高いらしい。まだ結成して間もないバンドだが、SEAPOOLの曲には確かな「熱」がある。今作をきっかけに、その熱に心打たれる人が増えてほしいなと思う。