ロックンロール戦線異常あり

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ライブレポート(?):スピッツ 横浜サンセット2013-劇場版-

 


『スピッツ 横浜サンセット2013 -劇場版-』

 

まさかこの映像が公開されるとは…!

 

ライブがあったのは2013年、映画が公開されたのは2015年。「DVDは出さない」と当時から告知されていたため、完全に「幻の映像」となっていた本作。ライブも映画も見ていない身としては完全にあきらめていたが、まさかこのタイミングでお目にかかることができるとは。世の中が自粛ムードになってしばらく経ち、何となくどよ~んとしていたが、今回の解禁で初めて「自粛生活も悪くないな」と思えた気がした。

 

数日かけてゆっくり見ようと最初は思っていたが、一度再生したが最後、完全に引き込まれてしまい流れるままに最後まで見てしまった。正直「DVD化しない」という選択は英断だったのかもしれないと思うほど、この映像には「特別感」があった。

 

とにかくセトリが凄い。2013年当時の最新作「小さな生き物」までの全てのオリジナルアルバムから選ばれ、代表曲からレア曲まで網羅した渾身のセットリスト。それでいてどの曲も瑞々しさがまったく失われていない。最新作収録の「僕はきっと旅に出る」「小さな生き物」の間に、20年前に作られた「夏が終わる」がすっと溶け込む。「アパート」「月に帰る」と初期のレア曲が立て続けに演奏された後にヒット曲「チェリー」が鳴らされても違和感はない。いつ作られたとか、どのくらいの人気があるかとか関係なく、全ての曲が同じ世界の中で共存しているように感じた。

 

そして改めて感じた彼らの演奏力の高さ。草野マサムネの透明感がカンストしたような声がフィーチャーされがちだが、他の3人の演奏も確かな存在感がある。圧倒的なスター性があるメンバーがいるわけではないが、それぞれのメンバーが目立ち過ぎず隠れすぎず、互いに引き立て合う絶妙なバランスが、ライブ映像だとはっきりとわかる。

高い演奏力に相対するゆるゆるMCもスピッツのライブの魅力。ぶっちゃけMCに関しては最近の若いバンドの方がうまいだろう…だがそんなことはどうでもいいのだ。特別な場でも一切気負うことなく繰り広げられる雑談や、照れくさそうに言った「スピッツに…ついてこぉい⤴︎」という煽りに、誰にもまねできない、何にも代えられないスピッツらしさがあるのだから。

 

…とまあいろいろ書いたが、そもそも「夏の終わり、海の近くで生のスピッツを見る」というコンディション、最高か…?もし自分が恋人と一緒にこの場所にいたら、きっと「夏が終わる」あたりで号泣し、「アパート」から「月に帰る」のコンボで爆泣きしていると思う、幸せ過ぎて。というかこの映像を観て無茶苦茶彼女が欲しくなりました。世知辛えな…

 

まだまだ外に出にくい生活が続く。スピッツもツアーのほとんどが延期になってしまった。スピッツに限らず、ライブができなくて精神面や金銭面で苦しい思いをしているミュージシャンは少なくない。でもそんな中で少しでも自粛生活の支えになればと、様々な形で曲を届けてくれる彼らの姿勢には感謝の気持ちしかない。またライブができる日が戻ったら、たくさん足を運ぼうと思う。自分を支えてくれた「音楽」に直接ありがとうを言いに行くために。