Apple Musicでたまたま出会ったバンド。
演奏は世にいう「シティポップ」寄りだと思うのだが、曲を覆う退廃的な雰囲気はなんだろう。身体は洗練された都会にいながらも、心は薄汚れた路地裏をひとり彷徨っているようなちぐはぐな感じ、そこに強く惹かれた。
ギリシャラブの魅力を一言で表すなら「きもちわるさ」だと思う。歌詞、演奏、MVどこをとっても隠し切れないキモさが滲み出ている。その一方で、それぞれのキモさのベクトルは微妙に異なっている。
たとえばこの曲、夢と現がドロドロと混じり合うようなMVの「恐怖」、《猫の髭みたいな君の肋骨をなぞる機械になる》という言葉選びに潜む強烈な「フェチズム」。そして淡々と進みながら少しずつズレていく演奏の「不安感」。それぞれのキモさは複雑に絡みあい、何とも言い難い「狂気」を生み出す。
しかしこれは決して不快なものではない。見てはいけないと知りつつも何度も見てしまう、不安と高揚感が入り混じる中毒性が彼らの曲にはある。そしてその魅力にいち早く気づいたのがドレスコーズの志磨遼平。彼は自らが立ち上げたレーベルの第一弾アーティストとして、まだ無名だったギリシャラブを引き抜いた。Vo.天川悠雅のアンニュイさと色気を兼ね備えた佇まいは、志磨遼平の孤高のカリスマ性と重なるところがあるように思う。
また歌詞に注目すると、彼らの曲ではしばしば「性」と「死」が表現されている。どちらも「きもちわるさ」と「快楽」の狭間にあり、彼らの音楽性に深く関わっているのは間違いない。そういえば、かつてスピッツのVo.草野マサムネは、自らの曲について「セックスと死がテーマになっている」と話したことがあるという。表現の仕方は違えど、曲の根源にあるものは共通しているように感じる。
華々しく登場したというよりは、独特な存在感を放ちながら今のバンドシーンにじわじわ食い込み始めているバンド。クセになるその音楽性と、それに支えられた確かなカリスマ性が今後どう広まっていくか楽しみだ。