ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

おとぎの国から「イマ」を歌うバンド、Cuberry

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まるでどこかの国のおとぎ話のような、メルヘンな雰囲気。それでいて少しサイケデリックな雰囲気漂うギターリフ、淡々としているが柔らかな歌声、それを優しく包み込むコーラスワークが、曲の幻想的な雰囲気をさらに濃くしている。

 

Cuberryは京都を中心に活動しているフォーピースバンド…というと少し語弊がある。メンバーの1人SetsukaはバンドのCDジャケットやMVなどのアートワークを一任しており、音楽と映像を合わせた制作集団…というカテゴリが近いのかもしれない。

上にあげたMVもSetsukaによるもの。アイロンビーズのみで作られたキュートでサイケデリックなアニメーションは、かつてレゴブロックで作られ注目されたホワイトストライプスの『Fell in Love With a Girl』にも引けを取らない凄まじい出来になっている。

 

Cuberryを「メルヘンチックなほんわかバンド」と評するのはちょっと違う。彼女たちが影響を受けたと話すのは、90年代初頭にアメリカを中心に巻き起こった「ライオットガール」(Riot Grrrl、パンクロックの精神にフェミニズムをかけ合わせたムーヴメント)。今なお世界規模で直面しているジェンダーを取り巻く様々な課題に対し、彼女達もまた自分なりのメッセージを曲に乗せて発信している。

それが色濃く現れた新曲『ニューストーリー』では、闇を切り裂くような鋭いギターリフと共に「サイレンス=沈黙」と名付けられた女性が自らの運命を打ち破り新しい物語を紡ぎ出す様が歌われる。「誰にでも歴史を作り出す権利はある」というしなやかで強い意志は、男女関係なく心に訴えかけられるものがあると思う。

 

 

 

強いメッセージ性を携えた彼女たちの言葉が、メルヘンな雰囲気に水を差しているかというと全くそんなことはない。むしろそうしたメッセージの存在を知れば知るほど曲はより深みを増す。

さらに言えば「幻想の世界」というステージがあるからこそ、彼女たちのメッセージはよりスムーズに届くのだと思う。優しいタッチで描かれた絵本だけど、きちんと教訓が込められている、彼女たちの曲を例えるならそういう感じだ。

 

ふんわりとした親しみやすさだけでなく、その中に確固たる信念を持って活動しているバンド。こういうバンドがどんどんオーバーグラウンドに出てこれば、日本のバンドシーンはもっと奥行きが出るんじゃないかなぁと思う。

 

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