ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

ディスクレビュー:ベルマインツ『MOUNTAIN』

本作のリードトラック『浮かれてた』を聴いた時、「これはクるな」と感じた。

 


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The SongbardsやEasycomeなど上質な歌ものロックバンドを多数輩出してきた関西のインディーロックシーン。その期待の新星ベルマインツ初のフルアルバム。多様な表情を見せてくれる11曲の中に、彼らの魅力がこれでもかと詰まっている。

 

本作は編曲や演奏に多くのミュージシャンが参加しており、結果としてこれまで以上にバラエティ豊かな作風に仕上がった。クラリネットが大胆に取り入れられたボサノバ風味のバラード『2023』や、軽やかなピアノとストリングスが気持ちいい『逃避行』など、多様なサウンドによって色付けされた曲の数々によって、初のフルアルバムとは思えないほど深みのある作品になっている。

 


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ベルマインツのサウンドからは、ニューミュージックから渋谷系を経てシティポップへ繋がる一連の流れをひしひしと感じる。

大瀧詠一やユーミンなどその流れを作り上げてきたアーティストの持ち味は、都会的なスタイリッシュさとノスタルジーが共存することで生まれる温かな人間味。ベルマインツの音楽の根幹にもそれが確かに根付いている(意識したのかしてないのか、1曲目『コラージュ』には大瀧詠一の『君は天然色』をうっすら彷彿とさせるフレーズが…)。

 

一方で「ロックバンド」としての力強さも随所に表れているのが彼らの面白さ。スタイリッシュな空気から突如放たれる『浮かれてた』のエモーショナルなギターソロは圧巻。『魚』のややシューゲイザーチックなアプローチも面白く、アルバムをグッと引き締める良いスパイスになっている。スピッツがいい例だが、ポップなバンドがふいにロックンロールな一面を見せてくれると個人的にかなりグッとくるのだ。

 

まだ結成数年ほどしか経っていないにもかかわらず、既に抜群の安定感が感じられる作品。間違いない名作だが、惜しい点がひとつ。彼らのルーツや音楽性を考えると、今作が配信のみというのは少しもったいない気がする。いつの日かレコードで聴きながら読書とかしたら最高だろうな〜とか、思ってしまうのでした。

 

MOUNTAIN

MOUNTAIN

  • ベルマインツ
  • オルタナティブ
  • ¥2241