ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

好きな「邦楽の歌詞」10選

今回は「はてなブログ10周年記念企画『10にまつわる4つのお題』」専用のテーマ「好きな〇〇10選」を使って、「好きな邦楽の歌詞10選」をやりたいと思います。

個人的に好きな歌詞を並べてあーだこーだ言っているシンプルな記事です。そこそこなボリュームがありますがお付き合いいただければ幸いです。最後にはこのテーマを選んだ理由も書いております。

 

それではどうぞ!

 

 

1

人が海に戻ろうと流すのが涙なら 

抑えようないね

(聖なる海とサンシャイン/THE YELLOW MONKEY)

 

聖なる海とサンシャイン

聖なる海とサンシャイン

  • THE YELLOW MONKEY
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星の数ほどある「涙」をテーマにした歌詞の中で、とりわけ好きな一節。果てのない海とちっぽけな人間のコントラストが美しく、吉井和哉のロマンチックな感性が迸っている。

そして生命の源は海であること、血液と海水はほぼ同じ成分であること、涙は色を失った血液であることを考えると、ロマン一辺倒ではなく案外理にかなったことを言ってる気もする。その納得感も含めて好きな歌詞だ。

『聖なる海とサンシャイン』はシングルとアルバムでアレンジが異なるが、筆者は断然シングル派。サビのラストで高らかに歌い上げる吉井和哉の声が好きなんだな…

 

 

2

友達の彼女に手を出したい

親のこと裏切ってしまいたい

殺すくらい誰かを愛してみたい

修羅場こそ私の現世の場所

(ルシファー/2)

 

ルシファー

ルシファー

  • 2
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元The SALOVERSの古舘佑太郎率いる2『ルシファー』からの一節。疾走感あふれるロックンロールに乗せて歌われる、倫理観など親の腹の中に置いてきた…と言わんばかりのフレーズ。

誰もが心に抱きつつも見ないふりをしている汚れた欲望と真正面から向き合い、それを吐き出すのはパンクの基本精神。なにかと良い人であることを求められる風潮がますます加速していく社会の中で、こういう言葉を歌ってくれる人がいることに救いを感じる人は少なくないと思う。

 

 

3

テキトーに這い上がれ

壊せないスクールカースト その中で

終わらないスクールカースト その中で

(スクールカースト/バズマザーズ)

 

スクールカースト

スクールカースト

  • バズマザーズ
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中学時代にこの曲に出会わなくて本当に良かった。冒頭《黒板消し吸うアレよりも存在感のないそこのお前》とからかいながら、《お前の焦点が合う世界を信じればいいと思う》と優しく歌いかける山田亮一の飴と鞭。典型的なモテない人間として、半端に自意識を拗らせていたあの頃にこんな言葉をかけられたら、間違いなく俺の拗らせは暴走していた。

だが大人と言われる年齢になってもこの曲を聞くと一種の万能感というか、自分に酔う感覚を味わうことがある。年を重ねてもなお残り続ける自意識の残りカスをかき出してくれるような、そんな曲だと思う。

 

 

4

厳かはいやだ くだらない方がいい

笑えりゃなおいい 即死で頼むぜ

(即死/↑THE HIGH-LOWS↓)

 

ハイロウズ『即死』より。まさにタイトル通り、破壊力抜群で少し笑えてしまうのだけれど、甲本ヒロトの死生観がはっきり現れた重要なフレーズだ(ハイロウズにはそういう曲が多い)。

「死」を歌っている時のヒロトからは、誰よりも強い「生への執念」を感じる。時代が変わっても、周りが変わっても、人生の全てを生き尽くしてやるとでも言うような確固たる信念を身に纏っているように見える。

即死を願うことは、人生を最後の最後まで搾り尽くしたいという願いとつながっている。ヒロトは永遠に大好きなロックンロールを続けることで、それを実現しようとしてるのかもしれない。

 

 

5

目が覚めた瞬間僕の心臓の鼓動が

4つ打ちじゃなくてエイトビートになってました

(終わりなき午後の冒険者/爆弾ジョニー)

 

終わりなき午後の冒険者

終わりなき午後の冒険者

  • 爆弾ジョニー
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大学受験を控え戦々恐々としていた高3の頃に出会った爆弾ジョニー。『終わりなき午後の冒険者』の2番冒頭に飛び出すこの歌詞が当時めちゃくちゃ好きだったのをよく覚えている。

心臓の鼓動をドラムビートに見立てた比喩表現。シンプルではあるけれど、「あぁこの人たちの身体はバンドでできているんだ」と思わせる確かな説得力がある。バンドをやることに恋焦がれていた当時の自分に、彼らの姿はものすごく眩しく見えた。

その後紆余曲折ありながらも活動を続ける5人を見ると、まだまだ彼らは根っからのバンドマンなんだなぁと安心する。新譜も早く聴かなくちゃ!

 

 

6

神様って誰だよ どこに隠れてるんだ

泣いてる君に気がついてくれよ

(カッコーの巣の下で/the pillows)

 

カッコーの巣の下で

カッコーの巣の下で

  • the pillows
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以前も書いた気がするが、the pillowsはこれまで何度も、絶望や孤独の中にある微かな希望の光を掬い上げてきたバンドだ。挙げたい歌詞をあげればキリがないが、今回は2016年の楽曲『カッコーの巣の下で』から選ばせてもらった。

生まれた環境の中で「愛情を受けられなかった」「自分の人生を決められなかった」子供たちに寄せたという本楽曲。そんな中でこの歌詞は、今まさに泣いてる「君」がいることを理解しつつ、自分ではどうすることもできないやるせなさが滲み出ている。《汚れた川を汚れた僕と泳ぐ》ことで孤独を分かち合った『ストレンジカメレオン』とは異なり、『カッコー〜』の「僕」は「君」とひとつ壁を隔てているような立ち位置にいるように見える。

普通の子供時代を送ってきた身では彼らの孤独に本当の意味で寄り添うことはできないことを、山中さわおはよくわかっているのだろう。それでも彼は曲中で『手を繋いでいこうぜ』と必死で手を伸ばそうとする。そこに山中のソングライターとしての信念と覚悟、そして精一杯の優しさを感じずにはいられない。

 

 

7

ゴリゴリ力でつぶされそうで

身体を水に作り変えていく

魚の君を泳がせ 湖へ 湖へ

(さらさら/スピッツ)

 

さらさら

さらさら

  • スピッツ
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スピッツの2013年の楽曲『さらさら』からの一節。草野マサムネの詩は毎度、涼しい顔でずるっと心をえぐりとるような恐ろしさを秘めているが、ここ数年で最もそれを感じたフレーズだ。

君と僕の心のすれ違いを繊細なタッチで描いた曲の中に突如現れる、絵画的ともとれる抽象的な表現。それは身体の交わりを超えた究極の愛にも見えるし、どこか俗世からの「解脱」を想起させる。「セックス」と「死」という、彼らの曲に幾度ともなく登場したテーマが、またひとつ上の次元に進んだことを示唆しているように感じた。

 

 

8

言い出せない愛は 海鳴りに似ている

心絶え間なく寄せ 胸を強く揺さぶる

(ゆうこ/村下孝蔵)

 

ゆうこ

ゆうこ

  • 村下孝蔵
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昭和を代表する「美しい日本語を使うミュージシャン」の1人として、村下孝蔵は外せない。代表曲『初恋』の歌い出し《五月雨は緑色》を筆頭とする研ぎ澄まされた色彩感覚や巧みな比喩表現は、もっと評価されて然るべきだと思う。

そんな彼の歌詞の中でもとりわけ好きな一節。悲しい過去を抱えた想い人に気持ちを打ち明けられないままもがいている人間の心情を「海鳴り」に託すことで、残酷なほど美しく表現している。彼の曲を聞くと、日本語の素晴らしさを再確認させられる。

ここ最近「文学的な歌詞」という言葉が結構簡単に使われる印象があるが、真の意味で文学的とはきっとこういうことなんだと思うね。

 

 

9

オーロラなんか一回も

見る事ないままくたばる気がする

(観察日記/岡崎体育)

 

観察日記

観察日記

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岡崎体育最大の武器である「観察眼」をテーマに、彼のパーソナルな部分を掘り下げたAORチューン『観察日記』からの一節。孤独と孤高の境目でもがいていたかつての彼自身を描いたAメロの終わりに、「変わり映えのない人生」を端的に表した名フレーズ。

このフレーズを見た瞬間、自分の中に「いつか誰かとオーロラを見たい」という夢がはっきり生まれたのを覚えている。普段は意識しないが言われてみると確かにそうかもしれない、という絶妙なところをついており、下手なメッセージよりもずっと共感できる。

オーロラが持つ「現実にあるのに架空に思える」不思議な存在感は、かつての彼が夢見た大きなステージと重なっているように見えるのは考えすぎだろうか。今やその夢の舞台に立っている彼がオーロラを見られる未来は、そう遠くないのかもしれない。

 

 

10

生き続けるってことは取り残されるってことか?

お別れはもううんざりだ サヨナラはもう勘弁だ

どこへも行くな

(また明日/フラワーカンパニーズ)

 

また明日

また明日

  • フラワーカンパニーズ
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ラストはフラワーカンパニーズ。別れの悲しみに打ちひしがれながらも、涙でくしゃくしゃになった顔で前を向くような、骨太なロックアンセム。

フラカンはある時期から自らの「老い」と向き合う曲を作ることが増えた。《生き続けるってことは取り残されるってことか?》という嘆きにも似た問いかけは、彼ら自身が歳を重ねたからこそ実感を持って歌える等身大の言葉だ。

一方で曲のテーマやリリースされた時期(2012年)を考えると、この曲の背景には東日本大震災の傷跡が生々しく残っているように感じる。別れに対する恐怖と悲しみを包み隠さず歌ったこの曲は、数えきれないほどの望まない別れを生んだあの一瞬に、真の意味で寄り添っていると思えてならない。

 

 

以上「好きな邦楽の歌詞10選」でした。ここまで読んでくれた方は本当にありがとうございます。

 

以前甲本ヒロトがテレビで「若者は歌詞を聞きすぎ(もっと衝動に身を任せていい)」というようなことを言っていた。もちろん一理あるなと思ったし、音楽の感想を書く身として気をつけなきゃなと感じる部分もあったのだが、やはり「日本語の力」を一番強く受け取れるのは日本人だけである以上、改めて「歌詞の魅力」と向き合うのも大事じゃない…?と感じたのが本記事を書いたきっかけだった。

今回挙げきれなかった好きなフレーズは、またいつか別の場所で紹介したい。これを読んでくださった方も、日常で音楽を聴く中でふと気になったフレーズ、衝撃を受けたフレーズがあれば教えてくれると嬉しいです。

それではまた!はてなブログ10周年めでたい!