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(少しネタバレ)ライブレポート:ドミコ 血を嫌い肉を好むTOUR 名古屋公演

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久しぶりのバンドのライブを見に行くのは、なんだか懐かしい友達に会いに行くようで少しドキドキする。この夜もそうだった。

ドミコのライブを見に行くのはこれで2回目。前回は5年前、今池のサーキットイベントでステージすらない小さなバーだったのを覚えている。それからの彼らの快進撃はもちろんチェックしていたが、ようやくでっかくなった彼らを見る機会を得ることができた。

 

 

会場はReNY limited。今まで行ったことのない箱だったが、さすが栄の中心部に位置するだけあってかなりおしゃれな箱。

かつてはディスコだったこともあり、その名残がちらほら。特に天井のでっかいシャンデリアが、普通のライブハウスとは少し違う絢爛な雰囲気を作り出していた。バンドを選ぶ箱ではあるが、少なくともドミコにはぴったりの空間だ。

 

ここからライブ本編のレポート

 

開演時刻になった瞬間、前触れもなくバカでかいドラムが鳴り響き、ゆっくりと幕が上がる。拍手と小さな歓声の中現れたのは、いつものようにラフな格好をしたドミコの2人…ん?3人?

 

ベースがいるんですけど

 

ライブだとサポートでベースがいるのか…という驚きを全く整理できないまま、ライブはドミコお得意のサイケなリフ…だが全く知らない曲でスタート。予習してないだけ?新曲?思っていた姿と違いすぎて状況が全く飲み込めない。

結局「彼らはドミコではない」という当たり前の事実に気がついたのは、2曲目の中盤に差し掛かった頃だった。

 


結論を言うと、ワンマンツアーと名乗っておきながら本公演だけシークレットゲストを招いていた…というオチ(Twitterで告知はしていたが自分は完全に見逃していた)。

そのゲストというのが、ドミコの盟友Tempalayのフロントマン小原綾斗を中心とする「小原綾斗とフランチャイズオーナーズ」。あとで調べると、ベースにmillennium paradeで活躍する佐々木集、ドラムにLUCKY TAPESや奇妙礼太郎などのサポートを務める松浦大樹という、さりげなくとんでもない布陣だった。

サイケやオルタナをベースにしながらも、歌詞に童謡を混ぜ込むなどチャーミングな一面も覗かせた、いい意味で好き放題なダンスロックで観客を踊らせる。急遽呼んでくれたドミコに感謝の言葉をかけつつ、最後は3人でワンワンニャーニャー良いながら退場していった。

 


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およそ15分ほどの転換ののち、ついに本物のドミコが登場。チョーキングを使ったリフに否応なく心が高鳴る『猿犬蛙馬』に始まり、『ペーパーロールスター』など攻撃的な曲を連発。

Vo.Gt,さかしたひかるの、ルーパーを巧みに操りながら自分だけの世界を作り上げるスタイルは5年前とまるで変わっていない。しかし音の厚みや佇まいは明らかにパワーアップしており、その姿は「音楽オタクの兄ちゃん」のレベルを超え、音の魔術師(どちらかというと黒魔術寄り)のオーラすらあった。

そんなひかるの演奏に、「クリック音なし」で完璧に合わせるDr.長谷川のビートは、もはや狂気の域だと言っても良い。Base Ball Bearの小出祐介が、「バンド界隈でドミコが話題にならないのはおかしい!」とラジオで熱弁していたが、本当にその通りなのだ。

 

 

2人のグルーヴが作り上げる混沌と恍惚が入り混じる世界は、凄まじい勢いで会場の空気を侵食していき、中盤スロウテンポの『眠れよ、眠れ』でひとつのピークを迎える。あの瞬間の「脳が犯される」感覚はなかなか味わえるものではない。《流れる脈波に子守りをされ眠るが良い》と歌われるままに精神を持っていかれそうになるのを必死で抑えながら、彼らの世界に入り浸る。

 

 

それにしてもドミコ、ライブだと1曲のボリュームが凄い。曲の間奏は音源の数倍の長さで弾き倒し、中盤にはもはや曲の一部なのか独立してるのかすらわからない、(体感的に)10分以上あろうかというロングセッションも披露。

プログレやサイケロックからの影響は音源からでももちろん感じられるが、ライブではそれがより顕著に出ていた。そう遠くない未来に「1曲入り30分」のアルバムとか普通に出してきそうで怖い、かたや15秒の動画がウケる時代だぞ。

しかしそんな長い演奏にも空気が冷めることはない。MCを挟むことなく立て続けに繰り出される爆音、しかもそれを「2人」でやってしまうという異常な状況が生み出す空気に既に会場全体が取り込まれているのだ。

 


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もはや今何曲目かもわからないほど脳がとろけ出している中、最新アルバムのタイトルチューン『血を嫌い肉を好む』で血湧き肉躍るようなハードコアを叩きつけ、本編はフィニッシュ。既にこの時点で満足感がすごいが、観客は何かに取り憑かれたようにアンコールを要求。

再度ステージに上がった2人は、自らの名を世間に知らしめた代表曲『まどろまない』で大いに観客を沸かせる。そしてラストは優しいギターストロークがoasisを彷彿とさせるミドルチューン『なんというか』でしっとりと終了…と思いきや舞台袖にいた小原の熱烈なラブコールで1曲追加!

「もうやる体力ないよ〜」とひとりごちつつ繰り出した『マイララバイ』の粘度の高いガレージサウンドが、映画のエンドロールのようにライブの最後を彩る。ギターソロを途中で小原に交代するサプライズもありつつ、大盛況のステージは幕を下ろした。

 

 

「良いライブ」はこれまで何度も見てきたが、この日はそれ以上に「記憶にこびりつくライブ」だった。

まさかのツーマンだった驚き、久しぶりに見たドミコの圧倒的な佇まい、陶酔と混沌が入り混じる演奏、最後のサプライズ…2時間半のステージの中であまりにもいろんな出来事が発生しており、このレポートを書きながら改めて「凄い時間だった…」と感慨に耽っている。これだからライブに行くのはやめられないぜ…と改めて実感できた夜だった。

 

Chiwo Kirai Nikuwo Konomu

Chiwo Kirai Nikuwo Konomu

  • ドミコ
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